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世界史などでも学ぶと思いますが、古代ギリシア・ローマの作家が生み出した作品は、思った以上に色々と残っています。ゼミではまず、ゼミ生の関心などに合わせて、ゼミ生みんなでひとつの古典作品を読みます。2022年度はギリシア悲劇作品、ソフォクレスの『アイアス』を(翻訳で)読みました。作品が背景とする神話や伝承をおさえて作品の内容に入り、作家が物語をどのようにアレンジしているのか、その意図や効果をどう考えるか、さらには作品の主要人物であるアイアスの描かれ方などを議論しました。狂気と正気の狭間、名誉をめぐる問題、そしてアイアスの自死にいたる過程など、とても興味深く読みました。神話の世界も面白いですよね。

ゼミで読んだ『アイアス』は、紀元前5世紀、つまり今からおよそ2500年前の作品です。そうした作品を今、私たちが読めるのは何故でしょうか。簡単にいえば、誰かが書き写したからです。オリジナルが失われたのちも、何度も何度も書き写され、時代を超えたものが残っているとも言えます。しかし、書き写すということは、どうしても書き間違えなど発生します。それでは今残っている作品の文字列は何か? 書かれている言葉は正しいのか? そうしたテクストの検討は、すでに古代に始まり、今なお連綿と続いています。原文の相違は作品理解そのものにも関わる問題になりますので、『アイアス』を読むなかでも幾度も話題に上がりました。

ギリシア悲劇や喜劇は現代でも様々な演出家の手で上演されており、今なお力を保っています。実際、悲劇に限らず、西洋古典の諸々は、とりわけルネサンス期以降、西洋文化の形成に大きな影響を与えました。ゼミでは、『アイアス』を上演するならば、という話題も議論になりました。これは現代における古典の有り様を考えることであったかもしれません。古代から現代にいたるまで、西洋古典がどのように受け入れられてきたかという探究は、人間の知的営みを幅広く考えることにもつながる、大変ですが面白い学びとなります。ちなみに、ゼミ生はそれぞれ自分のテーマを決めて、卒論を書きます。私はとあるギリシア悲劇作品をテーマにしました。

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2023.03