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江戸時代の文学作品は、高等学校までの教科書にとりあげられる例もすくなく、かりにとりあげられていても授業では読み飛ばされることがおおいように思います。ただ、江戸時代には、おびただしい数の作品が書かれ、おおくの人びとがそれを読み、楽しみました。
そうした当時の読者の楽しみかたのありようを考えるとき、文章だけでなく、挿絵が補助になることもあります。たとえば井原西鶴は、『好色一代男』の挿絵をみずから手がけていますし、また、曲亭馬琴も『南総里見八犬伝』の草稿のなかで絵を描き、挿絵を担当した葛飾北斎に指示しています。当時の作者たちにとって、絵もまた作品の重要な構成要素であったのでしょう。

とくに江戸時代後期に上方地域を中心に出版された名所図会に収載される挿図は、絵の「雄弁さ」を考えるうえで参考になる資料です。
ここに紹介する『大和名所図会』巻5の挿図は、『徒然草』にもその名がみえる久米仙人が雲に乗って飛ぶすがたを描いています。川で洗濯する女性の足に欲情して空を飛ぶ能力を失ったという久米仙人の説話をもとにしているのですが、この絵ではなぜか女性は洗濯をするのではなく、コジと呼ばれる道具を使い、里芋を洗っています。
この「なぜか」を深く考察することにより、この絵を描いた絵師の、そしてそれをみて楽しんだはずの読者たちの、教養の一端が浮かびあがってくるのです。

江戸時代の作品のおおくは、出版された本(=板本)として流通しました。また、筆者の手で書かれた/書写された本(=写本)ものこっています。なかでも板本は商業ベースで「生産」され、読者の「消費」を想定してつくられました。おそらく絵も、読者の「消費」欲をかきたてる素材であったと想像されます。
それらの書物は現存し、古書店でみかけることもすくなくありません。そうした書物をはじめ、おおくの貴重書を所蔵しているのが、天理大学附属天理図書館です。定期的に開催される展覧会では、授業の場を図書館に移し、「本物」をながめて講義をします。こうした「本物」にふれることが、文学作品の解釈のヒントになることもあります。

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2022.03