研究内容を 大まかにまとめると

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江戸時代に書かれた浄瑠璃や歌舞伎は近世文学の一分野であり、劇文学とも呼ばれます。上演を通じて長い間人々に愛され続けてきた作品は、現代では活字化されたテキストととなり、様々な視点から研究されてきました。ゼミでは作品テキストを分担し、そこに書かれたことばを辞書で丁寧に調べていきます。作品の中で多く用いられる表現、潜在的な表現、作品成立当時に流行した表現、作者特有の表現などが浮かび上がり、上演を目的に書かれた作品にみる文学としての独自性も見いだされます。また、視聴覚資料では感じられない登場人物の心情や作者の意図を読み取る作業は、ことばの探求の醍醐味を知り、日本の古典芸能の真の魅力と出会います。

ゼミ授業では演習形式で個人研究の発表を行っていますが、このゼミでは「トピック研究」を特色としています。作品中に登場する文化事象や先行研究をあげながら独自の視点で「読み」を深めていく研究方法です。たとえば、江戸の犯罪と刑罰について、遊女と遊郭文化について、そのほかにも貨幣制度、娯楽、信仰、医療、女子教育など、江戸時代の人々が封建社会を生きながら何を望み、楽しみとしたかを追究し、現代文化との違い、あるいは普遍的なものを考察します。この「トピック研究」によって、作品中にある、現代の私たちからは理解に苦しむ登場人物の行動心理が明確となり、それぞれの発表内容を共有・集積することで作品への理解を深めます。

現代の文楽公演作品を映像資料を用いて、浄瑠璃テキストからどのように立体化するかを確認します。また、同じ素材の歌舞伎脚色作品も鑑賞し、人形と人間が演じる表現の違いを比較。さらに、宝塚歌劇の脚色作品を鑑賞、制作時代も演出も演技者の性別も異なる表現を比べみて、ゼミの中で比較検討会を行います。そのように、同じ作品素材でありながら時代・ジャンル・ジェンダーを越境する表現を比較検討することで、日本で独特に成立・発展してきた演劇文化を横断的にとらえ、その差異と表現の可能性を検討することができます。この検討は人間が普遍的に何に幸福を感じるかを考察することとなり、今日的課題と未来のくらしを考究する糧となります。

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2023.02