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プロフェッサー 学習院大学
文学部 フランス語圏文化学科 内藤 真奈 准教授20世紀フランス小説、写真論、病気表象 -
ナビゲーター 4年生 小田島 悠さん ※学年は取材当時
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物語に入り込み、他者の視点から世界を見る体験
現代社会では多様性を認め合い共存することが求められていますが、他者を理解するのは簡単なことではありません。当ゼミでは視覚障害者を主人公とした小説であるエルヴェ・ギベール作『盲人たち』をフランス語原文で読み解き、その内容をもとに「見ること」「見ないこと」に関わるさまざまなテーマについて考察します。視覚に頼って暮らしている人間にとって視覚を持たないことを理解するには、知識はもちろんのこと、想像力を働かせなければなりません。知覚の方法が異なるという点で視覚障害者を絶対的な他者と捉えることができますが、その視点で書かれた文学作品を読むことを通して、他者の感じることや考え方を理解し、他者の立場に立って考えることを学びます。
具体例を出発点として、普遍的な問題を発見する
視覚障害は社会福祉と関連が深いテーマであるとともに、西洋文化では哲学や宗教と結びつき、芸術分野でも多く取り上げられてきました。当ゼミではまず、鑑賞したことのある作品(文学、美術、映画、漫画など)のうち、視覚障害を描いた作品を紹介する口頭発表を行い、テーマ自体が決して特別なものではないこと、視覚障害にはさまざまな描き方があることを理解します。次に小説を読解し、担当学生が内容から発見した「視覚」に関わる問題点をクラスメートに共有し、その問題点をもとにディスカッションへと移行します。教員は既存の知識や議論を紹介し、モデレータを務めますが、基本的には学生が主体となって問題を発見することが重視されます。
ゼミでの学びを活かして、立場の異なる人々の心に寄り添うことができる人へ(小田島)
本ゼミではテクストを精読するだけでなく、登場人物たちの心の機微や場面展開など、作品を掘り下げる質問が投げかけられます。物語の構造や情景に散りばめられた作者の意図を検討する中で、自分と価値観の異なる人々や物語に対して、積極的に理解しようとする姿勢が養われます。また、日本語とは言語的性質が大きく異なるフランス語の学習により、物事を論理的に捉える思考法も身につきます。フランス語圏の文化についてさらに理解を深めるとともに、それらを学ぶことで、自分自身の視野を広げ、ゆくゆくは日本の文化を海外に、海外の文化を日本に伝えると共に、立場の異なる人々の心に寄り添うことのできる人になりたいです。