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人間の体内にも存在する「金属錯体」。例えば、ヘムと呼ばれる金属錯体は鉄原子とポルフィリンという有機物(配位子と呼ぶ)から成り、血液中で酸素運搬の役割をするヘモグロビンの元となります。このように、身近に存在する金属錯体ですが、有機合成を駆使し様々な配位子を合成することで、金属錯体は無限に設計することができます。同じ鉄原子でも、別の配位子と金属錯体を作ることで、磁石としての性質を持ったりします。また、少し高価ですが、白金原子を使った金属錯体では、紫外線をあてることで赤やオレンジ色に光ったりもします。このように、色々な金属と配位子の組み合わせで、面白い性質を示す金属錯体の合成を目指しています。

私たちの研究室では、目的の性質発現のために配位子を設計し、金属錯体を合成します。では、金属錯体はどんな構造をしているのか?それを明らかにするには、金属錯体の分子一つ一つが規則正しく並んだ “単結晶” を作る必要があります。単結晶は、主として、金属錯体の溶液を濃縮することで得られたりもします。X線構造回折装置を用いることで、単結晶内で錯体分子の並んでいる様子(集積構造)が分かります。金属錯体の分子が集積するには、互いの分子が相互作用する必要があります。それらは「分子間相互作用」と呼ばれ、相互作用の種類や方向を理解することで、金属錯体の性質をもう少し正確に制御することもできます。

金属錯体の性質はいろいろありますが、私たちは特に、磁性(磁石としての性質)と発光特性に着目しており、それら性質の外部刺激(光や圧力、ガス雰囲気下、有機溶媒蒸気など)への応答性を調べています。例えば、圧力をかけて磁性や発光特性が変化すれば圧力センサーに、アルコール蒸気下でそれら特性が変化すればアルコールセンサーになります。こうした外部刺激に応答する材料は、今でもいっぱいあります。しかし、分子レベルでの外部刺激応答は、既存の材料に比べて、高機能化やミニマライズした材料開発に繋がります。

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2024.03