研究内容を 大まかにまとめると

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北海道札幌市を拠点とする私たちの研究室では、フィールドワークとラボでの実験から、主に鳥類の生態を解明するための研究に取り組んでいます。調査地の森では、雪解けの後、太陽光が林床まで届き、エゾエンゴサクやエンレイソウなどが可憐な花を咲かせます。初夏になると、温暖な地域で越冬していたキビタキ、オオルリ、コルリ、クロツグミ、センダイムシクイ、ヤブサメなどの夏鳥が繁殖のために飛来し、林内に設置した巣箱では留鳥のシジュウカラやヤマガラなどが繁殖を開始します。私たちは巣箱で営巣する鳥類の繁殖生態のモニタリングや、森林や農耕地に生息する鳥類の生息地選好性などを調べています。

人が様々な感染症リスクにさらされているのと同様に、野生動物にも多様な感染症がみられます。ウイルス、細菌、菌類、原虫類、蠕虫(ぜんちゅう)類、節足動物などの中で、宿主となる動物の病気を引き起こす寄生者は病原体と呼ばれます。私たちの研究室では、野外で捕獲した鳥類を対象に鳥マラリア感染症や蠕虫感染症の検査を行っています。そして、各種鳥類の採餌習性(食物の種類、採餌する場所など)と蠕虫感染リスクとの関係などを調べています。また、細菌感染リスクに影響する可能性のある卵殻表面構造(写真左:走査型電子顕微鏡での撮影画像)、卵表面の撥水性(写真右:接触角計での撮影画像)、尾脂腺分泌物の成分なども調べています。

都市でありながら豊かな自然に恵まれた札幌は、市域の約6割が森林で占められており、支笏洞爺国立公園の広大な森林とつながる国指定天然記念物の藻岩原始林や円山原始林を内包する豊かな森林が広がっています。この私たちのフィールドには、天然記念物クマゲラを含む亜寒帯の鳥類群集が生息しています。そして札幌の都心部の基盤となる扇状地を形成した豊平川は、この森林地帯の東側を通って都心に流れ出し、そのあと草地性鳥類が多数繁殖する石狩川と合流し、石狩湾にそそぎます。このような多様な環境で鳥類の生息地選好性や、生存及び繁殖に影響する環境要因を調べることで、環境保全に役立つ基礎データを収集しています。

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2023.06