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プロフェッサー 東京農業大学 北海道オホーツクキャンパス
生物産業学部 北方圏農学科 岡田 慶一森林生態学/菌根菌/物質循環/森林保全 -
ナビゲーター 修士2年 高橋 穂乃花さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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樹木が世代をつなぐ仕組みを菌類との共生関係から解き明かします
森林では、静かに見えて実は次の世代の木々が生まれ続けています。その仕組みの一つが「倒木更新」。倒れた木の上に新しい木が育つという、ちょっと不思議な現象です。病気に弱い針葉樹にとって、倒木の上は病原菌が少ない“安全地帯”です。しかし同時に、とても栄養の乏しい厳しい環境でもあります。そこで活躍するのが、根と共生する菌根菌です。菌根菌は倒木の有機物を分解し、木が生きるための栄養を届けるパートナーのような存在です。研究室では、この菌根菌がどのように栄養を獲得し、木の成長を支えているのか、その仕組みを探っています。森の中の見えない協力関係を解き明かす研究です。
思い通りにいかない自然だからこそ必要な順応的保全管理
気まぐれな天気や野生生物の動きなど、自然は人間の思い通りにはいきません。だからこそ、現場の状況を確かめながら計画を柔軟に更新していく「順応的管理」が重要になります。世界遺産・知床の森林再生でも、広葉樹の回復やシカ被害対策を、効果を検証しつつ一歩ずつ進めています。知床に最も近い大学にある私たちの研究室は、その地の利を最大限に活かしています。広葉樹の成長やシカの影響を毎年モニタリングし、現場の判断に欠かせないデータを提供しているのです。教科書だけでは学べない“生きた自然”を相手に、知床の未来をつくる研究を進めています。
シカ被害対策の成果を、現場の森へしっかり届ける
北海道の自然は雄大ですが、その分、守り続けるのは簡単ではありません。阿寒湖周辺の森林では深刻なシカ被害を受けて以来、30年以上対策が続けられています。しかし、森が元の姿を取り戻すにはとても長い年月が必要です。私たちの研究室では、シカが好む樹種を中心に、幹の傷や樹皮はぎの痕跡を“診断”し、世代構造を読み解いています。広大な森を学生たちが人海戦術で駆け回り、過去のデータと比較しながら回復状況や必要な対策を明らかにし、現場へ還元しています。森林の健康診断チームの一員として、自然復元の最前線に関われる学びがここにあります。