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プロフェッサー 東京農業大学 北海道オホーツクキャンパス
生物産業学部 北方圏農学科 中丸 康夫土壌学・生物地球化学 -
ナビゲーター 4年生 古畠 悠悟さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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有機肥料を効果的に使い、化学肥料に依存した農業から脱却する
日本の農業では主に化学肥料が使用されています。化学肥料は作物の収穫量を増やすためには効果的なためです。しかし、化学肥料はミミズや微生物などの餌となる有機物を含まないため、土壌の生態系を貧困にしてしまいます。さらに、主に輸入に頼る化学肥料の高騰は農家経営を圧迫しています。そこで、家畜の糞などの有機廃棄物をリサイクルし、肥料として活用することで、農家経営と土壌生態系を改善することができます。従来、有機肥料だけでは化学肥料に収穫量で劣ると思われてきましたが、私たちは作物によっては有機肥料で化学肥料に勝る収穫も得られることを明らかにしました。
有機肥料を使えば環境に優しいわけではない。有機肥料の欠点も正しく評価する
化学肥料から有機肥料に切り替えることには、デメリットもあります。重さが重く匂いもある家畜糞は化学肥料より扱いにくく、また豚の糞などは多くの重金属を含んでおり、これによる環境汚染も懸念されます。多量に使用すれば環境を汚染する点では、化学肥料も有機肥料も同じなのです。そして北海道の農地は川や湖などの自然環境に隣接しています。そこで、海洋水産学科とも協力して、農業による環境への被害を予測し、影響を最小限にするため、農地からの肥料成分の流出量を把握し、農地周辺の河川、湖沼などの生態系への影響を予測する研究も行っています。
気候変動で世界はどうなる?農業を持続して食糧生産を守るためには?
森林では植物が落ち葉などを土に供給することで、有機物が蓄えられ、豊かな生態系を持った土が生まれます。森林を開墾してできた畑では、土を耕すことでこの蓄えられた有機物が消耗していきます。それを補給し農業を持続するためには、有機肥料による有機物の補給と、土を耕し過ぎないことが必要です。土に有機物を増やすことは、炭素を土に貯留することにより、温暖化対策にもなります。この研究室では、土を守り未来の農業を守るためのあらゆる手段を研究しています。例えば学生が自主的にキャンパス内で自然農法を実践し、宇宙空間で有機栽培を行う方法まで検討しています。