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プロフェッサー 東京農業大学 北海道オホーツクキャンパス
生物産業学部 北方圏農学科 中村 隆俊植物生態学 -
ナビゲーター 4年生 間宮 大さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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ミズゴケがつくりだす湿原環境の謎
高緯度地域に広く分布するミズゴケ湿原では土壌が著しい酸性を示します。その強酸性環境は湿原植物の普遍的な分布パターンに強く影響する大変重要な特性として注目されています。しかし、湿原がなぜ強酸性化するのかについてはよく分かっていません。私たちはミズゴケ自身が強酸性環境をもたらしている可能性に着目しています。ミズゴケには根が無いため周囲の陽イオン類を自らの葉・茎へ吸着させることで養分を確保しています。その際にミズゴケは吸着量と同量のH+を体外へ放出することから、周りが強酸性化すると考えています。小さなミズゴケが広大な湿原の環境をかたちづくる不思議について、北海道の湿原をフィールドに研究しています。
壊滅したアッケシソウ群生地の自然再生
網走市には絶滅危惧種アッケシソウの国内最大級の群生地があり、秋の紅葉を目当てに多くの人が訪れる観光地として親しまれてきました。ところが、不適切な群生地管理が行われ一時ほぼ壊滅状態に陥りました。そこで、市から要請を受け、私たちの研究室を中心に複数の研究室が連携しながら現地調査を通じて原因究明を行い(土壌の強酸性化が原因でした)、科学的データに基づいた綿密な再生・保全対策を毎年講じてきました。こうした取り組みが実を結び、現在では最盛期の9割ほどまでに回復しました。その予後を見守るため、今も群生地での調査を続けているほか、アッケシソウ命名の地である厚岸町でもアッケシソウ群落の再生に取り組んでいます。
原生花園の花咲く自生種を用いた道路のり面緑化
研究室では地元国道の道路のり面を対象とした緑化活動「きたはなプロジェクト」に参画しています。「きたはなプロジェクト」では、外来牧草で覆われた殺風景な道路のり面に対して、エゾスカシユリやセンダイハギなどの原生花園(花咲く海浜草原)自生種を播種・移植し、自然の花が咲き誇る景観へと導くことを大きな目的としています。地域行政や住民、教育研究機関、企業など多様な団体がそれぞれ得意分野を生かしながら長年続けている緑化活動ですが、当研究室は原生花園自生種の導入技術を開発するという重要な役割をずっと担ってきました。催芽・育苗方法の確立から苗移植先の環境適地解析まで、自生種の生態に基づいた研究をしています。