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プロフェッサー 東京農業大学 北海道オホーツクキャンパス
生物産業学部 北方圏農学科 和田 健太分子遺伝学/実験動物学/家畜育種学 -
ナビゲーター 4年生 原 菜摘さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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病気の原因になる遺伝子変異と発症メカニズムの究明
先天性の病気の多くは遺伝子の異常が関与しています。私たちはヒト疾患に似た病気を発症するマウスやラットなどを利用して、水晶体が白く濁る白内障、うまれつき眼が小さい小眼球症、角膜が突出する円錐角膜症などの眼疾患に関わる遺伝子変異を探しています。また、最近ではゲノム編集によって作製した長毛マウスの性差に関する研究や、オスのマウスにしか発症しない円錐角膜、オスからメスへ高い攻撃性を示すマウスの行動について、その原因となる遺伝子とホルモンとの関連についても研究を進めています。こうした研究の成果は、遺伝子機能の解明や、病気の予防・治療に役立つ知識になると期待されます。
眼が正常につくられるために働く遺伝子
脊椎動物の眼球は進化の過程で種を超えて高く保存(構造が似ている)されてきました。哺乳動物の眼球は子供が母親のおなかの中にいる時につくられます。この過程は遺伝子からつくられる多数のタンパク質やRNAが時間・空間的に働くことにより成立します。これらのいずれかが欠けた場合、眼球は正常につくられないことがあります。私たちは、うまれつき眼のないラット系統(Nodai aphakia: NAK/Nokh)が、なぜ正常に眼球がつくられないのか、遺伝学や分子生物学を駆使して解明しようとしています。これにより、眼球形成に働く新しい分子や仕組みがみつけられるかもしれません。
遺伝子情報を利用したエミューの効率的な遺伝的改良
これまで上で紹介した2つは、モデル動物を利用した基礎生物学の研究でした。私たちは、基礎研究で得られた知識や技術を新しい動物資源へ応用することも目指しています。エミューは、オーストラリア原産の大型走鳥類(飛ばない鳥)であり、お肉、たまご、脂肪を生産する動物です。特に脂肪からつくられるオイルはスキンケア製品の優れた原料となっています。一方、エミューの産業利用の歴史は浅く、ウシ、ブタ、ニワトリなどのような“遺伝的改良”はされていません。私たちは将来的に、“たくさん脂を生産するエミュー”や、“たくさんのたまごを産むエミュー”などをつくるために、エミューの性質に関係する遺伝子を探しています。