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プロフェッサー フェリス女学院大学
国際交流学部 国際交流学科 山本 千晶ジェンダー法学、フェミニスト法理論 -
ナビゲーター 3年生 小林 愛美さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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「女性に対する暴力」の実態を知る
「女性に対する暴力」は近年「ジェンダーに基づく暴力(gender based violence)」とも言われますが、被害者の性別に偏りがあることに特徴があります。セクハラやDV、性暴力はとくに被害者の性別が女性に偏っています。これは偶然でしょうか?そうではありません。では、なぜ性別に偏りが生じるのでしょうか。そのことを理解するには、私たちの社会ではいまだに「性別」によって期待される役割や人格が異なっていること、すなわち社会とジェンダーとの関わりについて学ぶ必要があります。
被害者の立場で考えてみると…
今年度はセクハラの裁判例やテキスト、被害者の手記を読みました。一番感じたことは「自分の物差しで解釈しない」ということです。最初は、「嫌なのに誘いに応じるのはおかしい」「嫌だったらすぐに上司に相談すればいいのに」と考えてしまいがちです。しかし、被害者の声に耳を傾けると、「嫌だ」という自分の感情はもしかしたら自分の「思い過ごし」かもしれない、むしろ「嫌だ」と感じる自分の感じ方がおかしいのかもしれない・・・そういう不安から、断ったりすぐに誰かに相談することをためらうことがあることが見えてきます。そういう被害者の経験に寄り添いながらもう一度被害者の証言や供述を読み直すと、今までとは違う「ストーリー」が見えてくることもあります。
専門家ではない、一人の市民として「法」に関わる
法の世界はいまだに女性の参画が少ないことから、性被害などの女性身体により深く関わる経験が適切に反映されていなかったり、固定的な性役割を想定しているものもあります。ここから、「女性」(あるいは「男性」)や「被害者」の定義が“狭い”ことが見えてくるかもしれません。多様な性/生のあり方を適切に反映するために、被害者や女性の「経験」に基づきながらジェンダーの視点から分析し、社会に対して問題提起していくことは、私たち市民の法に対する一つの関わり方です。