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遷移金属錯体はアルケンやアルキンなどの多重結合と反応し、金属を含む環状化合物「メタラサイクル」を形成することが知られています。私たちはメタラサイクルが多様な反応性を示すことに着目し、比較的単純な鎖状骨格をもつ出発化合物から、医薬品等にも含まれる複雑な多環式化合物を一挙に構築する方法の開発を目指しています。例えば、分子内にアルキンとアレン(アルケンが二つ連なったもの)をもつ基質と水をルテニウム触媒と反応させると、メタラサイクルの1種である「ルテナサイクル」を経て、生物活性をもつ天然有機化合物である(+)-Myomontanoneを簡便に合成できることを見出しています。

私たちはこれまでアルキンの炭素原子に窒素原子が直接結合した「イナミド」の興味深い反応性に注目し、特に遷移金属触媒を利用した新しい分子変換法の開発研究に取り組んできました。最近、窒素原子上にベンゼン環をもつイナミドをルテニウム触媒と反応させると「ルテニウムビニリデン」という中間体を経由して環化反応が進行し、インドール骨格がとても効率的に構築できることを明らかにしました。インドールは医薬品に含まれる非常に重要な骨格の一つなので、今回我々が開発したこの方法が医薬品合成に用いられることが期待されます。

フラスコに試薬を入れて光を当てるだけで酸化還元反応が進行する「光レドックス反応」は世界中で激しい開発競争が繰り広げられています。私たちは光レドックス触媒とスルフィドという有機硫黄分子を触媒として用いるデュアル触媒反応系を開発し、アルケンにトリフルオロメチル基とクロロ基を同時に導入する反応を開発しました。トリフルオロメチル基は分子の代謝安定性や脂溶性を向上させることで生物活性の増強や副作用の低減に寄与する置換基で、クロロ基は化学変換反応の足がかりとしてよく利用されている置換基です。光照射のみでこの2つの置換基を一挙に導入できる反応は医薬品開発における強力なツールとして期待されます。

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2024.04