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プロフェッサー 城西大学
理学部 化学科 若林 英嗣有機化学 -
ナビゲーター M2 手塚 颯太さん ※学年は取材当時
研究内容を 大まかにまとめると
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新規芳香族化合物であるアズレン類は鮮やかな青色を有する
新規芳香族化合物である7員環と5員環が縮環したアズレン類は、その構造的特徴から、高度な機能性や薬理活性が期待されています。ナフタレンの構造異性体であるアズレンはC10H8のような簡単な炭化水素にもかかわらず,鮮やかな青色を持つ化合物です。我々はこの特異的な構造に興味を持ち、基礎研究の一端として、野副法、高瀬・安並法、そして独自に開発したオキサアズレノンとビニールエーテルおよびその類似体との反応によるアズレン合成法を用い、今まで合成困難であったアズレン誘導体を合成すると共に、それらの応用研究をおこなっています。
NMRは有機化合物の構造決定に必要不可欠な機器分析である
化学実験では予想外の反応が起こります。むしろ、すんなり成功するほうが少ないです。予想外の反応は失敗ではなく、そこから新しいものが生まれる可能性があります。そんなことから見つかったのが、アズレンキノンの新規な合成法です。アズレンの臭素化から予想外にも発見された微量のアズレンキノン。この反応を諦めずに、反応条件を精査することにより、最終的に一挙に80%を超える収率で合成できることを見出しました。この構造はNMR(核磁気共鳴法)で決定しましたが、このNMRは化合物の構造決定になくてはならない手段です。なお、このNMRは医療においてMRI画像診断装置として活躍する機器でもあります。
新規なアズレン類の合成を計画し、抗炎症作用などの薬理活性を調べている
このアズレン類は自然界においてハーブのカモミール精油やヨモギなどから見出されています。また、アズレン類の薬理効果は数百年前から知られており、穏やかな効き目のため、胃薬、目薬、うがい薬などに使われています。そこで、新規なアズレン類の合成を計画し、今までに100種類以上のアズレン類やトロポン類の薬理活性をしらべることにより、抗炎症作用、抗酸化作用、抗ガン作用などを示す化合物がいくつか見つかりました。現在、さらにこの構造を精査し、副作用の少ない化合物を見つけようと研究を進めています。