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 心臓内部の手術(開心術)では心臓の動きを一時的に止める必要があります。この時、心臓や肺の役割を代行する装置が人工心肺装置です。開心術では不可欠な生命維持装置ですが、人工的に血液を体の外に取り出す「体外循環」で命をつなぎますので、血液は必然的に非生理的な環境に曝されます。
 例えば、ガス交換は肺の役割を代行する人工肺に高流量の酸素を吹付けることで行いますが、同時に血液は過度の酸化ストレスに曝されます。
 また、体外循環では血液凝固(血液が血管の外に出ることで固まる)を防ぐために様々な抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)による血液凝固管理を行いますが、その管理方法は多くの問題を抱えています。

 体外循環を行うことで血液中に発生する酸化ストレスは、急性腎不全や溶血(赤血球が破れること)などの合併症を引き起こすことが知られています。体外循環中の酸化ストレスを迅速に検出できれば、人工心肺装置を操作する臨床工学技士や医師は人工肺に過剰な酸素を吹き付けずに済むので、これらの合併症を予防できる可能性があります。
 曽山研究室では増谷弘教授ご協力のもと、酸化ストレスに高感度に反応する新たな物質を発見しました。引き続き臨床応用に向け、酸化ストレスを迅速に検出できる方法の開発に取り組んでいます。

 体外循環では回路内の血液凝固を防ぐため、抗凝固剤を投与します。この抗凝固・抗血栓効果を確認する指標には様々なものがありますが、いずれも科学的根拠に基づいていない部分があります。例えば、活性化凝固時間(ACT)という指標は、抗凝固剤の濃度との相関が低く、必ずしも抗血栓効果を反映しないことが知られています。
 曽山研究室では松本智子准教授や天理よろづ相談所病院・臨床工学部の清水貞則技士との共同研究の中で、凝固線溶波形解析(CFWA)という新たな技術を用い、各種抗凝固剤の作用機序の違いを解析することで、体外循環における血栓・出血リスクの予測を目指しています。

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この研究室があるのは

医用工学
2023.03