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われわれの身体には100兆もの微生物があらゆる部位に常在しており、これを「マイクロバイオーム」と呼びます。マイクロバイオームは、ヒトの免疫機能の維持や必要な栄養素を生合成するなど、ヒトの健康増進のための有益な環境を提供しながら、ヒトと巧緻な共生関係を構築しています。ところが、何らかの要因によりこのバランスが破綻すると疾患へと進展していくことがあります。アトピー性皮膚炎患者と健常人の皮膚に存在する微生物を網羅的に調べたところ、患者と健常人ではマイクロバイオームが異なっていました。この様に患者皮膚に存在する微生物を解析することでどの様な微生物が皮膚炎の増悪や原因に関与しているかを知ることができます。

アトピー性皮膚炎患者皮膚のマイクロバイオームの多様性は低下した状態になり特定の微生物で占有されます。微生物社会の秩序を整える、つまり健康なマイクロバイオームへと再構築することで疾患の克服へと導くことには合理性があります。これを応用し発展させたものが、健常な微生物を患者に移植することで多様性を高める「皮膚マイクロバイオーム移植療法」です。「微生物をクスリ」として考えるこれまでにない新しい試みです。移植後はマイクロバイオームの多様性が上昇することが期待されます。

アトピー性皮膚炎には外用ステロイド薬やタクロリムス軟膏が汎用されていますが、近年では痒みの経路を抑制する新しい作用機序を示す分子標的薬が開発されて高い治療効果を示しています。これらの治療薬が皮膚マイクロバイオームにどの様に影響を与えているのか皮膚科医と共同で検討しています。例えば、抗体薬であるデュピルマブは炎症性サイトカインの産生を阻害しますが、投与2週間で健常人と同じレベルまで皮膚マイクロバイオームの多様性を上昇させ、増悪の原因となる黄色ブドウ球菌の量を低下させました。この様に皮膚のマイクロバイオームを解析することで医薬品の副次的な効果を評価することができます。

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2024.04